『子どもの時間』

 

 

ひさしぶりに『詩』のご紹介です。

みなさん子どもの頃を思い出して

きっと納得させるんじゃないかなぁ~。

 

 

『子どもの時間』         高橋順子

 

 

子どものころって退屈だった

おとなになりたかったのに

すぐにはおとなになれそうもなかったから

あんまり長くて

あきあきして

退屈してしまった

 

でもふしぎだ

退屈してるはずの子どもの顔が

いきいきしていて

退屈していられないはずのおとなの顔が

くすんでいる

退屈って いいことだったのかもしれないんだ

 

ふしぎだ

おとなになるのに二十年

年寄りになるのにそれからまた四十年以上かかるのに

どうして子どものときのほうが

時間がゆるやかなのか

時間がつっ走ってゆかないのか

 

わたしたちの時間は

空の中に生まれた喜ばしい雨つぶ

のように始まるのではないか

だんだんスピードがついてきて

雨つぶの頬もこけて

 

新品のまんまるの雨つぶはまだ

きみの空に浮かんでいて落っこちそうもない

ゆらゆらしだすのは

きみが最後のスクールバスから降りるころだろう

きみはもう退屈してないだろう