加島祥造さんのことば

 

もうだいぶ前に『求めない』という、詩人の加島祥造さんの本がとても話題になりました。私が加島さんを知ったのもそのときです。すべてを捨ててひとりで静かに山の中で暮らしているというフレーズにも興味を持ったのを覚えています。加島さんが『老子』の論語をとても読みやすい造語に訳して書かれている本です。老子の言葉はきっと素晴らしいものに違いないとは思っていましたが難しくてわかないので一生、縁はないかも知れないなと感じていました。ところが加島さんの優しいことばでとてもわかりやすく入ってきます。読んでいてとてもいい気持ちになれました。

 

第11章  『「空っぽ」こそ役に立つ』   

 

 

遊園地の

大きな観覧車を想像してくれたまえ。

沢山のスポークが

輪の中心の轂(こしき)から出ているが

この中心の轂は空っぽだ。だからそれは

数々のスポークを受けとめ、

大きな観覧車を動かす軸になっている。

 

粘土をこねくって

ひとつの器を作るんだが、

器は、かならず

中がくりぬかれて空(うつろ)になっている。

この空の部分があってはじめて

器は役に立つ。

中がつまっていたら

何の役にも立ちゃしない。

 

同じように、

どの家にも部屋があって

その部屋は、うつろな空間だ。

もし部屋が空でなくて

ぎっしりつまっていたら

まるっきり使いものにならん。

うつろで空いていること、

それが家の有用性なのだ。

 

これで分かるように

私たちは物が役立つと思うけれど

じつは物の内側の、

何もない虚のスペースこそ、

本当に役に立っているのだ。